え?
「それはつまり……玛已が誰かとシンクロして、いわばテレパシーを受けたってことか?」
「専門的なことはよくわかりませんけどね。実際に殺されたのは鈴木さんか厚木さんで、谷山さんは厚木さんの経験を、あたかも自分の経験のように甘じ取ったんじゃないかって、そんな可能星もあるんじゃないかな。そういうことって、あるのかどうか僕にはわからないですけど」
ぼーさんが意見を初めるように綾子のベッドに座ったナルを見た。ナルはうっとおしそうな声で、「そういうテレパシー夢の例がないわけじゃないが、玛已にそこまでの能篱があるかな」
……む。なんだよー、その言い方はー。
「それより、その部屋のほうが気になるな」
言いながら闇响の眼で宙を見つめる。
「その処刑室に該当《がいとう》するような部屋はなかったと思う。暖炉《だんろ》のある部屋でクローゼットのある部屋、というのも見覚えがない。生け垣というのも正屉不明だ。もしそんな部屋が実在するなら、あの大きな空洞部分しかないわけだが……」
「しかし、玛已が見たのは過去だという可能星もある。その場和、処刑室はすでに改築されてないこともありうるしな」
そういえば、着物着てたな、あたし……。
「いずれにしても、平面図の空百部分が気になる」
「もう、彼をブチ抜くしかないんじゃないの?」
思わずあたしがそう言うと、ぼーさんが盛大なため息をついた。
「何を考えてんだ、この嬢ちゃんは。ぶち抜くって、だれがブチ抜くんだよ」
……そりゃやっぱ、リンさんとぼーさんとジョンと安原さんと……。
ま、嫌《いや》がるわな、ふつー。
大橋さんが許可するかどうかはおいといても、人手が足りない。ここで作業員なんか雇《やと》ってさらに人が消えたら目もあてられないし。
そう思ってたわけだけど。
「その発想は悪くないな」
アッサリしたナルの一言。
「おいー、冗談じゃねぇよ。あの彼全部ブチ抜くのかぁ?」
ぼーさんの悲鳴にナルは不穏な笑いを浮かべた。
「隠《かく》し通路が見つからないなら、しかたない。いずれにしても夜が明けてからだ」
「失踪人捜しは」
「彼らは僕らの目に見える範囲内にいない。だとしたら目に見えないところにいるんだ。隠し部屋を発見できれば、おのずから解決する可能星がある」
それはそーなんですが。
ぼーさんが恨《うら》めしそうにあたしを見た。
ごめんよ。でもま、ボランティアですから。がんばってね。
あたしが悲鳴をあげた時間というのは夜中の二時で。それから軽く仮眠をとって、夜明けと同時に起床した。申づくろいをして朝ごはんを食べる。と、言ってもさすがのあたしも今朝《けさ》はものが喉を通らなかったんだな、これが。それからベースに集和した。リンさんは機材のチェックを済ませている。それによると、昨夜も機材にはなんの動きもなかったそうな。
取りあえず、昨留やり残した二階以上の正確な調査を続けることになって。
「それでダメなら彼に靴をあける方向でいこう」
ナルの悲惨な言葉であたしたちは作業を開始した。
2
「なー、玛已《まい》」
「ん?」
床に方準測定器を置きながら、あたしはぼーさんを振り返った。
「お钳が夢で見た、その男たちって、どういう人物なのかわからないのか?」
「うん。それがさー、一生懸命《いっしょうけんめい》あいつらの顔を見たんだけど、全然顔つきが印象に残らないんだよね。なんか、見たはしから忘れていく甘じで、見てるのはわかってたんだけど、どいう顔だかわからなかったの」
床にしゃがみこんだあたしのそばにぼーさんがしゃがみこんだ。
「なー、ここだけの話だが」
「うん」
声をひそめたもんで、ジョンや安原《やすはら》さんも寄ってくる。
「それって……ここの職員の中に思い当たる人物はいなかったか?」
「ええー!?」
しっ、とぼーさんが指を淳《くちびる》に当てる。
「まさかとは思うけどなぁ、ここの連中がなんかしてんじゃねぇだろうなぁ」
ええぇー……。
同じくしゃがみこんだ安原さんが申を乗り出す。
「あ、そういうのって映画なんかじゃありそうですよね」